現場レポート

トップに戻る
ふつう、建物は更地に建てますよね。でも今回の工事は、使っている建物と同じ敷地内で、空いている部分を利用しながら、新しく建てては古い部分を壊していく、というやり方です。
もう少し詳しく言うと、まず工場を半分だけ解体し、その部分の土地と、以前から空いていた部分を使って、新工場を建設。その後、工場横の空いている部分に本社を建てます。本社がほとんどできあがって引っ越しが終わった後、庇(ひさし)をつくったら建物が完成。最後に駐車場を整備して、工事完了です。
難しいですよ(笑)。まず何と言っても、狭いんです。古い建物があるうえ、敷地いっぱいに建てるので、周囲に余裕がない。足場の幅も狭いところでは通常の3分の1程度しかとれないし、資材の置き場所にも苦労しました。
特に苦労したのは、新社屋用の鉄骨を立てるレッカー。通常なら、敷地内の空いたところにレッカーを置いて作業をするんですが、とにかく場所がない。結局、新社屋が建つ部分の基礎工事を終えて埋め戻してから、その上に土を盛ってレッカー用の通路をつくりました。
また、工場は整備用の機械を地下に埋めるため、普通の建物の2倍程度にあたる3〜4mの深さまで掘らなければなりませんでした。ところがこれが、鉄骨を建ててからの作業だったので、階高が5mほどしかない状態。そのため、普通のショベルでは作業ができない。コンパクトな状態から腕が長く伸びる特殊なショベルを、業者さんに相談して選びました。
海に近い場所なので、支持地盤が地下深いところにあるんですよ。そのため長い杭が必要でした。13mと8mをつなぎ合わせて、計21mの杭を打ってあります。これも狭い敷地の中で苦労しましたね。周囲の道も狭くて、杭を運んでくるトレーラーが曲がりきれない可能性がありましたから、事前に業者さんを呼んで検証してもらったりもしました。
あとは、外観ですね。この物件を設計したのが、デザインに強いこだわりを持つ設計事務所なので、こだわった部分が多いんですよ。たとえば建物の南半分の外装には、中がロックウール・表面が鉄板の複合板を使用。見た目には、つや消しシルバーの板なんですが、施工の際にわずかの傷がついても目立つので、扱いには気をつかいました。3階の外周部のサッシは、一度は問題なく仕上がったものの、より美しく仕上げるためにミリ単位で位置をずらし、やり直しました。
工場の機械据え付けが、一発でうまくいったことですね。地下に埋めるものなので、間違ったら取り返しがつかない。穴の位置や深さを念入りに測って、ミスなくいったときはうれしかったです。それから、この現場に限ったことではありませんが、大宗の監督は現場管理から見積り、図面作成、段取りなど、何でもやります。だから、建物づくりの全体を見渡せる。それが面白いですね。
トップに戻る